新ハーバード流交渉術

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核心的な欲求

核心的な欲求は人間の基本的欲求であり、ほぼ全ての交渉でほとんどの人にとって重要なものである。
以下に挙げる5つの核心的欲求が原因で、交渉中に多くの感情が生じることになる。
それぞれの核心的な欲求が、過剰にでも過小にでもなく適切に満たされることが望ましい。

核心的な欲求無視されている場合満たされている場合
価値理解 Appliciation自分の考え方、思い、行動に価値がないとされる自分の考え方、思い、行動に良い点があると認められる
つながり Affiliation敵として扱われ、距離を置かれる仲間として扱われる
自律性 Autonomy意思決定をする自由が侵害されている相手が自分の意思決定の自由を尊重してくれる
ステータス Status自分の置かれた位置が、他者の置かれた位置よりも劣っているような扱いを受ける自分の置かれた位置が、それにふさわしいものとして認められる
役割 Role自分の現在の役割とその活動内容が個人的に満足できるものではない自分の役割とその活動内容を、満足できるものに定義している

価値理解 Appliciation

  • 相手の考えに価値を認めることは、相手に同意することとは違う。
  • 価値理解をした上で、相手の提案に同意することも、反対することもできる。
  • 価値理解をすれば、お互いが協力的に議論を進める可能性が高まる。

価値理解をするためには

  • 相手の考え方を理解する
  • 相手の考え方、思い、そして行動の中に価値を見出す
  • 自分の理解を、言動や行動を通じて相手に伝える

価値理解をする

  • 価値理解は、自分の上司、部下、同僚、そしてまさに現在交渉している相手についても行うことができる。
  • 相手が心から自分の訴えが聞き入れられたと感じたときには、その人のメッセージの価値を認めただけでなく、その人の人間そのものの価値を認めたことになるのだ。
  • 様々な交渉で使える汎用的な質問集を自分用に作って、相手の考えをよりよく理解できるようにしておくと良い。

価値理解をしてもらう

  • 意見を聞いてもらうため、時間を割いてくれないかと提案する
  • 自分の考えに価値があることを説得するよりも、相手に質問を投げかけて、相手に自分の考え方の価値を深く考えさせた方が良い
  • 要点は2つか3つにして、重要な質問に答えてもらうようにする

つながり Affiliation

つながりを強めれば、恊働作業は容易になり生産性も高まる

自律性 Autonomy

  • 意図的であろうとなかろうと、誰かに自律性を侵害されれば、ネガティブな感情を持ちやすい
  • 自律性が尊重されれば、積極的に関わろうとする傾向にある

交渉するときには、次のことを率先して行う。

  • 自分の自律性を拡大する
  • 相手の自律性を侵害するのを避ける

ステータス Status

  • ステータスを改善したり新しく開発することで、交渉に自信を持って望むことが可能になる
  • 交渉問題に関連があってふさわしい価値がある時はいつでも、相手の高いステータスを評価しよう
  • 自分の専門知識やこれまでの成果に対して誇りを持とう

役割 Role

  • 誰しも自分が満足できるような役割を演じたいと思っている
  • 交渉の中で不本意な役割を演じれば、不公平感や、怒り、イライラを感じることになる
  • 誰でも自由に、自分や相手の役割を満足の得られるものに変えることができる

満足できる役割の重要な性質

  • 満足できる役割には、明確な目的がある
  • 満足できる役割には、自分に取っての意義がある
  • 満足できる役割は、偽りのものではない。本当の自分を表現できるものである。
  • 自分の状況をどう「意味付けるか」によって、自分の役割に満足を感じることもある

一時的な役割を賢く選ぶ

  • 相手が設定した役割に反応する形で、自分の役割を演じてしまわないように注意 
  • 相手に自分の役割を選ばせてしまうと、満足を得られる役割を作るという核心的な欲求が実現されなくなる
  • 交渉では、自分らしく感じ、かつ協力関係を作り出すような一時的な役割を選択すべきである
  • 今選んでいる一時的な役割が、相手が望んでいるものかたまにチェックすると良い
  • 自分以外の人がそれぞれの役割をどう見ているかを理解すべきである
  • 役割がフォーマルであると自由に発言できない場合は、「インフォーマルに」やりとりをしようと提案することで、より自由にお互いの考えを述べ合ったり、お互いの信頼関係を強化したりすることができるようになる

強いネガティブな感情への対処

対処には以下の準備が必要。

  • 感情の温度をチェックする
  • 事前プランを用意しておき  -強くネガティブな感情を落ち着かせる  -感情の引き金となったものを診断する  -明確な目的を持って行動する
  • 怒りを爆発させることで強くネガティブな感情を取り除くことができるというのは間違い

交渉への準備

準備することで、感情的により良い状態で交渉を始めることができる。
万全の備えでミーティングに臨む交渉者は、交渉の問題ないようやプロセスに対して自信を持ち、また、お互いの間にポジティブな感情をどのように作り出すかを明確に理解している。

備えを効果的にするには、2つの重要な活動を行う必要がある。

  • 準備のやり方についてルーティン化する。交渉のプロセス、内容の問題、感情の全てに対しての備えをする。
  • 過去の交渉から学ぶ。経験から何かを学び取らない限り、経験自体にはほとんど価値がない。交渉の後、プロセス、問題内容、感情の3つの観点から、そのやりとりを振り返る。何がうまくいって、何を次から変えるべきか、自分自身に問いかける。

プロセスへの準備

以下の3つについて考える。

  • 目的 ... 何がこの交渉会議の目的か?
  • 成果物 ... この目的に最も適うのは、どのような契約案か?
  • プロセス ... どのようなステップで物事を進めれば、目的に即した成果を上げることができるか?

問題内容への準備

  • 交渉の7要素について詳細に議論する(詳細は下記「交渉の7要素」参照)
  • 自分の立場/相手の立場になって、交渉の7要素を検討する
  • 役割エクササイズを実行してみる

感情への準備

  • 自分側と相手側の欲求は何か、それをどのように満たすか、を明確に理解する
  • 平常心と自信を持ち、交渉において常に集中していられるようにする

交渉の7要素

7要素を使った交渉の準備

要素検討事項
関係交渉者間の現在の関係をどう見るか? 交渉相手は敵か見方か? どのような関係にすることを臨んでいるか? より良い関係を築くのに、どのような手順を踏んで行くか? 向かい合わずに隣り合って座るか? どのようにして親密な関係を作り、好意的な反応を促すことができるか? 交渉相手の言語を使うか?
コミュニケーションちゃんと耳を傾けているか? 何に対して耳を傾けるべきか? 何を伝えたいのであろうか?
関心利益私たちの関心利益は何で、その重要度の順はどうなっているか? 相手の主要な関心利益は何か? 私たちの関心利益の中で、どれが、相手の関心利益と両立することが可能だろうか? どの関心利益が、どうしても対立してしまうことになるだろうか?
オプション考えうる合意点のうち、双方にとって受け入れられるものとなるのはどの点か?
正当性どのような先例や正当性の基準(法、契約 etc)が、双方にとって納得のいくものとなりうるであろうか?
BATNA合意を達成することに失敗した場合、どうしたらよいだろうか? 相手が合意を形成しないまま立ち去るというなら、どのような代替案を相手側は持っているのであろうか?
コミットメント相手側から引き出せる約束の中で、こちらが現実的に求めらるものとして良い約束と言えるものは何であろうか? もし合意を達成するのに必要があるならば、こちらにはどのような約束ならしてもよいであろうか? 自分たち、相手側のそれぞれができる約束を書き出してみる。

7要素を使った交渉の診断

要素診断のための質問処方的アドバイス
関係交渉者は互いをどのように考え、どのように感じているのか?交渉相手の間に、親密な個人的関係と良い協力関係を築く。一緒に問題を解決する。
コミュニケーション意思疎通が乏しかったり、欺瞞的だったり、一方通行だったりしていないか?交渉者は互いに何をすべきか指図をしていないか?リラックスした双方向の意思疎通をする。質問する、聞く、信頼に値するように行動する。曖昧な約束は避ける。
関心利益交渉者は、自分の本当の関心利益を隠しつつ、相手に要求し、自分の立場のみを述べていないか?相手の関心利益を尊重する。自分の関心利益を理解し、相手に明らかにする。
オプション交渉が、勝ちか負けかのゼロサム・ゲームになってしまっていないか?何の拘束も前提としないで、ジョイント・ブレインストーミングを行い、双方の利益を満たす方法を考えだす。
正当性公正であることを全く気にしていないのではないか?何をする、しないを言い合って、ただ単に駆け引きをしているのではないか?双方にとって納得できる、客観的な公正な基準(先例、法、市場価値 etc)を探し、その利用を要求する。
BATNA合意に達しなかった場合にどうするかを考えないで、お互いに脅しをかけているのではないか?相手と自分にとってのそれぞれのBATNAを考えること。どのような合意であっても、合意しないよりは双方にとって良いことがあるということを認識すること。
コミットメント交渉者が、非現実的な約束をすることを要求していないか?果たしたいと思うような約束を草案化するのに失敗したのではないか?双方が実行できる公平で現実的な約束を草案化する。

※ BATNA (Best Alternative Negotiated Agreement) ... 交渉が決裂した場合に採り得る他の選択肢


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Last-modified: 2017-04-09 (日) 20:47:33 (2573d)